うちのHPを訪れて下さる方々の中には日本語教師を目指す方が多く、同じような質問を何度となくいただいているので、ここでまとめて答えさせていただくことにする。
私は日本にいた時私立の小学校で図工を教えていたことがある。塾で、小中学生の数学と英語、高校生の現代国語と英語を教えていたこともあった。子供と接するのはおもしろかったし、授業を楽しいものにするための教材作りに何より興味があった。
結婚後しばらくぶらぶらしていたが、実家の父に勧められて通信教育 『日本語教師養成講座』
を終了。その直後に某企業から頼まれて、4人の上部役員たちに日本語を教えることになった。しかし、その後間もなく出産。 配偶者も私自身も母親が専業主婦の家庭に育ったので、子供が生まれた後仕事をすることは正直言って考えてはいなかった。子育てと家事がやたら忙しくて、その上に仕事をするなんて無理な話だった。
やがて、息子が通うことになった小学校の校長先生との話から、図工と Reading
(読み方) のクラスをボランティアとしてお手伝いすることになった。これがある意味で 『教える仕事』 に復帰する可能性を考えるきっかけになったのかもしれない。
5年前、某 college の日本語教師募集の新聞記事を見た知人が電話をくれた時、迷わずそれに応募してしまった。
こんな田舎でも、日本人2人イギリス人4人の応募があったそうだ。面接は日本人とイギリス人をペアにして行われた。イギリス人の日本語力と日本人の英語力を観察するという選考側の意図からだろう。その中からひとり選ばれたのはラッキーだったと思っている。その後、他の
college からも頼まれて教えるようになった。
私は日本語教師としてイギリスに渡ったのではなく、こんな具合にほとんど成り行きで日本語教師になってしまったので、日本語教師を目指す方々に
「こうすれば日本語教師になれる」 という秘訣のようなものを伝授することは出来ない。採用事情は新聞から得ることになるが、日本のように就職がある程度一定の時期に定まっていないイギリスでは、いつ日本語教師募集の広告がどの新聞に出るか予想することは難しい。ちなみに、資格を持っていることは当然有利だが、実力がものをいうこの社会で、資格があるだけというのもあまり意味がない。経験も問われる。
イギリスでパートタイムで日本語を教えているのは、主に、日本人商社マンの妻かイギリス人の配偶者をもつ日本人である。それも、安い時給でも喜んで!という心構えの人間に限る。現在では、日本語教師の資格をとることが出来る大学がイギリスにも増えており、日本語教師のポストは、労働ビザのない外国人よりイギリス人に与えられてしまうことが多くなったといううわさもある。
日本語教師のポストが日本人よりイギリス人に与えられるとしても、驚くほどのことはない。日本でも、英語教師のポストは英米人より日本人に与えられている。特に中学校や高校の英語の先生は、ほとんど全員が日本人だ。教師というのは単に教えるばかりではなく、かなりの雑用をこなさなければならず、そのためには現地語が話せなければ出来ない職業だからだと思う。おまけに、ここに改めて書くまでもないが、どこの国でも外国人が労働ビザをとるのは至難の業だ。ボランティアとして
(無給で) 日本語を教える場合は別だが。
イギリスで日本語を教えるには、何よりも英語力が要る。授業中教師が日本語で話すことは大きなメリットがあるとはいえ、生徒からの質問
(英語) を理解し、文法的なことを英語で解説することが出来れば余分な時間が節約できる。私の場合、イギリス生活が永くなって、英語でのコミュニケーションにある程度自信がついてから教えることになったことは幸いだったと思っている。
college では授業をするだけではなく、数々の書類に目を通し、生徒の学業評価を書かねばならない他、折々ミーティングに出席して発言しなければならない。ボランティアとして働く場合はそういうことを要求されることはないと思うが、こういった雑用をこなし、他の講師とうまくお付き合いしていくことも仕事の一部だ。
日本語を教えるようになってからというもの、日本語と日本を再発見し、自分自身のアイデンテティーと正面から向かい合う経験をさせられている。日本語を教えることは本当におもしろい。教える立場にある自分が何より教えられていることに気づかされつつ、多忙な毎日をおくっている私だ。
日本語教師を目指すあなたに、心からエールをおくりたい。